FTCのaccessiBe命令とオーバーレイ:ECサイトの注意点

米FTCはWCAG準拠をうたう広告をめぐりaccessiBeに100万ドルの支払いを命じました。命令の内容と限界、オーバーレイを使うECサイトが今すべきことを解説します。

FixReports 編集部1分で読めます

2025年4月、米連邦取引委員会(FTC)は、オーバーレイ製品accessWidgetを提供するaccessiBeに対し、100万ドルの支払いを求めるとともに、適格かつ信頼できる証拠がない限り「自社の自動化製品であらゆるウェブサイトをWCAGに準拠させられる」と主張することを禁じる命令を確定させました。FTCは、このウィジェットがすべてのウェブサイトを準拠させるものではなかったこと、また同社が有料のレビューを独立したレビューに見せかけていたことを申し立てています。ECサイト運営者にとっての実務上の教訓は、オーバーレイのスクリプトはテーマのコード修正の代わりにはならず、ベンダーによる「準拠」の約束は自社ストアが基準に適合している証拠にはならない、ということです。本記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。

要点

  • FTCは2025年1月3日に申立書と命令案を公表し(採決は5対0)、2025年4月22日に最終命令を承認しました(採決は3対0、FTC (新しいタブで開きます))。
  • 命令は、accessiBeの自動化製品があらゆるサイトをWCAGに準拠させる、または準拠した状態を継続的に保つという根拠のない主張を禁じており、例外を除いて20年間有効です(FTCの分析文書 (新しいタブで開きます))。
  • 申立書には、ウィジェットを導入したサイトで見つかったECサイトに関わる不具合が挙げられています。たとえば、カートへの追加がスクリーンリーダーで読み上げられない、商品フィルターが使えない、といったものです。
  • 命令が拘束するのはaccessiBeだけです。オーバーレイを禁止するものでも、誰かのADA上の責任を判断するものでもありません。
  • UsableNetの記録では、2025年にアクセシビリティウィジェットを使う企業を相手取った訴訟は月に95~155件ありました(UsableNet (新しいタブで開きます))。

FTCはaccessiBeの何を問題にしたのですか?

FTCは、accessiBeが「accessWidgetであらゆるウェブサイトをWCAGに準拠させられる」という虚偽または根拠のない主張を行い、有料広告を独立したレビューに偽装していたと申し立てました。

申立書 (新しいタブで開きます)によると、accessiBeは購入者に対し、「1行のコード」を追加するだけでWCAG要件の30%に即座に準拠し、残りの70%は48時間以内にAIが対応し、その後は24時間ごとに再スキャンして準拠を維持すると説明していました。申立書によれば、販売されたサブスクリプションの大半は月額49ドルまたは年額490ドルのStandardプランで、代理店パートナーは再販用に20%の割引を受けていました。申立書に掲載された料金ページのスクリーンショットでは、全プランに「Litigation Support Package(訴訟支援パッケージ)」が付くとも宣伝されています。

申立書の訴因は次の3つです。

  1. 性能に関する虚偽または根拠のない主張:製品があらゆるウェブサイトをWCAGに準拠させ、その状態を保つというもの。
  2. 欺瞞的な形式の広告:有料記事を独立したレビューとして見せていたこと。FTCは、accessiBeがウェブデザイン系ブログのレビュー1本に1,900ドルを支払い、公開前にその内容を承認していたと申し立てています。
  3. 重要なつながりの不開示:accessiBeとレビュー執筆者との関係を開示していなかったこと。

最終命令は何を求めているのですか?

命令は、accessiBeが主張できる内容を制限し、特定の開示と100万ドルの支払いを求め、20年間にわたる遵守義務を課しています。

条項求められる内容
I適格かつ信頼できる証拠なしに、自社の自動化製品があらゆるウェブサイトをWCAGに準拠させられる、またはコンテンツが変わっても準拠を保てると主張しないこと
II総費用、制限事項、性能など、重要な事実を偽らないこと
III独立した意見ではない第三者のレビューや記事を、独立した意見として示さないこと
IV推奨者との予期しにくい重要なつながりを明確に開示すること
V顧客が支払う前に、製品を導入していない第三者のドメインやサブドメイン上のバリアは修正されないことを明確に開示すること
VI~VIII1,000,000ドルを支払い、被害回復のための顧客情報を提供すること
IX~XIII受領確認、遵守状況の報告、記録の保存、および20年間の有効期間

出典:同意命令案に関するFTCの分析文書(Analysis of Proposed Consent Order to Aid Public Comment) (新しいタブで開きます)

条項VはECサイトにとって重要です。チェックアウト、決済、レビュー、予約、サポートのツールは、別のドメインで動いていることがよくあります。申立書には、購入や予約を完了するために外部ドメインへ利用者を移動させるサイトが記載されています。その外部ドメインにはウィジェットがなく、ページもアクセシブルではなかったため、障害のある買い物客は購入できなかった可能性があります。

FTCは、この100万ドルが消費者への返金に充てられる可能性があると述べています(FTC、2025年1月3日 (新しいタブで開きます))。返金プログラムについては、FTCの返金ページ (新しいタブで開きます)で直接ご確認ください。

オーバーレイを導入したサイトでFTCはどんな問題を見つけたのですか?

申立書には、accessWidgetを導入したサイトにおけるレベルAおよびAAの不適合が記載されており、そのうちいくつかはショッピング機能に関するものです。

  • 商品をショッピングカートに追加したときや、必須のフォーム項目が未入力のときに、スクリーンリーダーがそれを読み上げなかった(4.1.3、3.3.1)。
  • 衣料品の色やサイズといった商品フィルターを選択できなかった。
  • 5つ星の評価画像が「previous(前へ)」ボタンとして読み上げられた。
  • メニューボタンが、展開・折りたたみの状態を誤って伝えていた。
  • キーボードトラップ、フォーカスインジケーターの欠如、不正確なラベル(2.1.1、2.4.7、1.3.1)。
  • 代替テキストが欠落している、不正確である、または意味をなさない。ある衣料品の商品画像は、ファイル名のような長い文字列として読み上げられた(1.1.1)。

申立書はまた、accessiBe自身のテスト担当者がウィジェットを導入したサイトを手動でテストしたところ、ほぼすべてのサイトでエラーが見つかったとしています。

FTCの命令でオーバーレイは違法になったのですか?

いいえ。この命令は、1社の広告と推奨表示に関する和解です。

オーバーレイを禁止するものでも、特定のウェブサイトがADAを満たすかどうかを判断するものでも、他のベンダーを拘束するものでもありません。ただし、他のベンダーもFTC法による欺瞞的な表示の一般的な禁止の対象であり、FTCはこの事案に関する事業者向けガイダンス (新しいタブで開きます)で、製品を宣伝する前に約束どおりに機能する証拠を用意するよう企業に求めています。ECサイト自身のアクセシビリティ方針についても、同じ姿勢で臨むのが賢明です。

オーバーレイで根本的な問題が解決しないのはなぜですか?

オーバーレイは既存のページの上でスクリプトとして動作するだけで、商品ページ、コレクションページ、カートページを生成するテーマのソースコードそのものは変更しません。

FTCの申立書は、オーバーレイを、コントラストや文字サイズなどインターフェースを一時的に変更するためのツールであり、サイトのコードを恒久的に変更することを意図したものではないと説明しています。2026年10月の確認時点で1,000以上の署名者が名を連ねていたOverlay Fact Sheet (新しいタブで開きます)は、画像の代替テキスト、フォームのラベル、エラー処理、キーボード操作については自動修復が信頼できず、既存のどのアクセシビリティ基準にもウェブサイトを完全に準拠させられるオーバーレイは存在しないと述べています。また、オーバーレイが、利用者がすでに使っているスクリーンリーダーなどの支援技術と競合することがあるとも報告しています。

欧州の障害者団体も同じ見解です。欧州障害フォーラム(European Disability Forum)と国際アクセシビリティ専門家協会(IAAP)は、2023年5月17日の共同声明 (新しいタブで開きます)で、オーバーレイによってウェブサイトが欧州のアクセシビリティ法制に準拠するわけではなく、利用者の支援技術を妨げることもあると述べました。これはEU向けに販売するECサイトにとって重要です。EUでは、2025年6月28日から欧州アクセシビリティ法(EAA)が電子商取引に適用されています(AccessibleEU (新しいタブで開きます))。

オーバーレイでADA訴訟のリスクは下がりますか?

入手できるデータを見る限り、下がるとはいえません。

UsableNetの2025年末レポートは、アクセシビリティウィジェットを使う企業に対する訴訟を毎月95~155件記録しており、月ごとの数値を当社で合計すると年間でおよそ1,400件になります。UsableNetは、ウィジェットは通常コードレベルの問題を修正せず、訴えに対する防御効果はほとんどないと結論づけています。原告側の専門家は、スクリーンリーダーやキーボードの利用者が実際に直面するものをテストしますが、オーバーレイはそうしたバリアをそのまま残してしまうことがあります。

オーバーレイを使っているECサイトは今何をすべきですか?

オーバーレイを残すか外すかはお好みで構いませんが、準拠のための手段としてオーバーレイに頼るのはやめ、コードの中にあるバリアを修正してください。

  1. ベンダーが約束した内容を確認する。 契約書やベンダーのページで「48時間で準拠」「証明書」「訴訟支援」といった表現を探し、その裏付けとなる証拠を求めましょう。
  2. オーバーレイをオフにしてテストする。 キーボードだけでトップページから商品ページへ移動し、バリエーションを選び、カートに追加して購入手続きボタンまで進みます。続いて、VoiceOverやNVDAなどのスクリーンリーダーで同じ操作を繰り返します。当社の無料スキャンは、最初の確認として、トップページ、コレクションページ、商品ページ、カートページ、コンテンツページでaxe-coreを実行します。
  3. オーバーレイをオンにしてテストする。 ウィジェットのツールバーがフォーカスを奪っていないか、ラベルのないボタンを追加していないか、スクリーンリーダーの読み上げ内容を変えていないかを確認します。
  4. 第三者のドメインも対象にする。 外部のチェックアウト、決済、レビュー、予約、チャットのサービスをすべて洗い出し、テストするか、各ベンダーにアクセシビリティについて問い合わせます。
  5. まずテンプレートを修正する。 商品、コレクション、カートのテンプレートは数百ページで繰り返し使われるため、そこでの修正が最も大きな効果を生みます。
  6. アクセシビリティ方針を見直す。 裏付けのない「完全準拠」の主張を削除し、利用者がバリアを報告できる手段を用意します。

優先順位付きのリストが必要な場合は、アクセシビリティ改善レポートをご利用ください。最大25ページをWCAG 2.2のレベルAおよびAAに照らしてテストし、購入手続きボタンまでのキーボード操作のみによるショッピングテストを含み、修正前と修正後のコードを示します。どのツールやレポートも、ADAへの準拠を保証したり、訴訟を防いだりするものではありません。

よくある質問

FTCはアクセシビリティオーバーレイを禁止したのですか?

いいえ。命令はaccessiBe Inc.とaccessiBe Ltd.に適用され、両社のマーケティング上の主張を制限するものです。オーバーレイを禁止したり、他のベンダーの製品について判断したりするものではありません。

accessiBeはいくら支払うことになったのですか?

2025年4月22日に承認された最終命令により、accessiBeは100万ドルの支払いを求められました。FTCは、この資金が消費者への返金に充てられる可能性があるとしています。

オーバーレイを使っていれば、ストアは基準に準拠していることになりますか?

それだけを根拠に準拠しているとはいえません。FTCは、accessWidgetを導入したサイトでもレベルAとAAの達成基準を満たしていなかったと申し立てているため、自社のページを実際にテストする必要があります。

オーバーレイは外すべきですか?

それはご自身の判断です。重要なのは、オーバーレイがなくてもテーマ、コンテンツ、アプリがキーボードとスクリーンリーダーで使えること、そしてウィジェットが支援技術を妨げないことです。

オーバーレイは欧州アクセシビリティ法(EAA)への対応に役立ちますか?

欧州障害フォーラムと国際アクセシビリティ専門家協会は、オーバーレイによってウェブサイトが欧州のアクセシビリティ法制に準拠するわけではないとしています。根本にあるコードを修正することが、確実な方法です。

出典